川村晃『若い廃墟』1964,終戦直後の自分を描く。『美談の出発』で芥川賞受賞後の作品

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 川村晃、 1927~1996、1962年に『美談の出発』で芥川賞
受賞だが、どうも小説家として知名度が低い。やや異色という
べきか。川村晃は『美談の出発』で1962年、芥川賞を受賞した。
この作品は病弱な妻とその連れ子、しかも妻と血がつながる義
理に子まで育てるお人好しの貧乏な筆耕職人の亭主のあまりの
お人好しぶりを描いている。やや時代離れしていて読者を唖然
とさせる内容で、だから芥川賞だったのかどうか。

 その2年後の作品が『若い廃墟』である。これは終戦直後の
作者を描く、自伝的作品だ。ただそのまま現実だったわけでは
ない。モデルは紛れもなく作者である。

 主人公の斉藤浩二は、旧制中学途中で少年航空兵を志願し、敗
戦後、東京の零細な工場で働いている。郷里のA町から小学校の
集まりである若葉会への入会の誘いがあった。かっては優等生だ
った浩二は進学も果たせず、また現在の冴えない境遇に引け目を
感じるが、やがてこの集まりで、人生や社会を論じ合うことに
喜びを覚えるようになった。

 工場の隣に米軍の兵器工場があり、そこにいる米兵におうおう
にして暴力を振るわれるため浩二はアメリカへの反感を募らせる。
彼は太平洋戦争開戦当時から少年航空兵時代時代と、ずっと米国
を憎んでいた。それは現在まで一貫している。幼馴染の美津子と
いう女性にいたってプラトニックな愛情を抱き、また、酒もタバ
コも女遊びも一切やらないストイックな生活である。

 中学のときの大男の親友、宮本は今は闇屋をやっていて、かな
り奔放な生活を送っている、今となっては二人は変わってしまっ
た、ことに互いに驚き、喧嘩もあるが、どちらも相手が精神用に
罹っているのだと許し合う。美津子との失恋の痛手を宮本に癒や
された浩二は、米兵に乱暴されている娼婦のサキ子に惹かれる。

 つまるところ二十歳前後の多感な時代、しかもそれが激動の
混乱の時代、敗戦に直面した異常な心情を率直に描いている。
毛色の変わった青春小説である。終戦直後の風俗もなかなか鮮
やかに描かれている。やはり敗戦直後の風俗は興味深い。

 とにかく作者の実にナイーブな感受性が印象深い。小説とし
ては、いささか舌足らず的ではあるは、それも清潔感と裏腹で
ある。

















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