佐多稲子『機械のなかの青春、ー紡績女工の詩』1955、かって存在した呉羽紡績の女工さんたちの世界を描く
かっては日本の主要産業は繊維産業であり、特に紡績はその
中心であった。「~紡績」と名がつく繊維会社は多かった。今
も「~ぼう」と行く会社名の企業、割と大企業は多い。紡績そ
れ自体はに国内では消滅業種にちかく、それらの会社は新たな
分野に進むと同時に生産は途上国に移転、・・・・・だが、日
本にはかって膨大な数の女工さん、紡績の女工さんたちがいた。
実はそれほど、遠い昔のことではない。女子バレーボール、の
日紡貝塚の東洋の魔女、はて女工さんだったのだろうか。倉敷
紡績も女子バレーボールチームがあったが、選手たちは全員、
庶務だったか、・・・・女工さんではなかった。
さて、、この小説、もはや誰も読まない、本も入手しにくいが
、多分、呉羽紡績の女工さん、その労働運動を描いたものだと思
う。なにせ佐多稲子は共産党員だったから労働運動的視点から書
くわけである。呉羽紡績から出た呉羽化学は自動車用ケミカルで
現在もよく知られている
例によって不景気である。繊維産業の不況は慢性化していた。
操業短縮が始まり、人員の減った女工たちの全身に大きな労働の
負担がかかってくる。彼女たちは皆、若い女性なのだ。職場では
上役に見込まれている女工への嫉妬もあり、まら労働者としての
自覚もある。会社側が予期し、そのため賃金を抑制されている結
婚の問題もある。
組合の評議員、兼松美代は、妹のキエ子と同じ工場で女工をやっ
ている。だが妹は健康を害し、帰郷した。彼女はミシンを買った。
組合の仕事と一家の事情が絡み合って、不安と希望が同時に彼女に
押しかかる。
井関のり子は優秀な技術を持ち、またなかなかの美人だが周囲か
ら孤立している。縁談で自分の運命が変わると期待している・彼女
自身は個人主義者だが、組合の評議員で共産党に通じていると会社
に疑われている美代の状況を会社にスパしている、との疑いもある。
が、のり子は縁談の失敗と過労で発狂する。そのときは、賃金ベース
アップの交渉時期でせっかくのベースアップも下には薄いと判明、
問題が噴出しそうだった。
それ以外に登場人物は多彩であり、それぞれ個性的なようだ。組
合運動としてはさほど活発ではない紡績会社だが、ガリ版刷り同人
雑誌の内容でアカと疑われたり、工員から職員に抜擢された途端に、
無理な労働を強いる青年やその恋人とのもつれた感情。紡績工場で
働く人たちの心情、体温がよく伝わる小説ではある。その姿を著者が
女工たちに代わって、社会に発信しているようだ。
基本は戦前に共産党に入党、戦後、除名された。樋口一葉『たけく
らべ』での新説で話題をまいた。
このsカウ品、女工さんの世界を社会に知らしめるとの考えで執筆
されたようで、その目的は十分果たしていると思う。読まれたらの
話だが。登場人物の見事は書き分け、個性の付与はなかなか見事だろ
うか。ただし井関のり子の描写が竜頭蛇尾な気はする。初版は角川書
店から、後に呉羽紡績労組からも出版された。
この記事へのコメント