R・ロバン『さかさまの世界、もしドイツが勝っていたら』1952,起こり得る最悪の事態
もしドイツが勝っていたら、確かに日本がアメリカに勝利は
考えにくいし、あり得なかったが、ドイツなら勝利はあり得た
、と私は思う。それはアメリカに先んじて原爆を実用化するこ
とであった。B29のような長距離大型爆撃機は持たずとも、あ
の脅威のV2、弾道ミサイルを実戦化していたのである。これは
まさに驚異である。ドイツも原爆実用化の研究は行っていたが
ノルウェーの研究実験施設はイギリス特殊部隊の攻撃では破壊
されてしまった。以上は私の思いだが。
さて、この本は1952年、筑摩書房から翻訳が刊行された。
1945年、原爆が広島、長崎ではなくロンドン、シカゴに投下さ
れた。
英米などの無条件降伏、その後、三カ国の勝利国の首領たち、
ヒトラー、ムソリーニ、秩父宮らがポツダムに集結する。秩父
宮には東條英機が随行していた。その集結の目的は戦後処理、世
界の再配分であるが、これら三勝利国の間で早くも世界制覇をめ
ぐっての鞘当手が露骨である。
ヒトラーはナチズムによるアメリカ、ヨーロッパの再教育、か
っては欧州文明の中心であったフランス文壇に奇妙な変化が現れ
てきた。或る夜に、人間からブルドッグに変身した偉大な作家が
君臨し、パリの社交界では馬の尻尾をはやした若い半馬人が未来
の選民として貴族連の驚嘆と憧れの的となる。アメリカではまた
、反民主主義教育が新しい世代に服従と迎合の精神を育てていく。
一方アジアでは、かっては実はコミュニズム思想を巧妙に取り
入れていたミカド帝国主義的秩序が、中国の農民をはじめ、広汎
な大衆を着々と手なづけ、洗脳し、日本軍将校の指揮下に入って
いった。赤色軍事細胞、かっての八路軍は変貌を遂げて「反西欧
国民軍」としてアジア大陸における強大な軍事組織となる。
ヒトラーの世界プランは敗北し、軍備を撤廃したアメリカに再
軍備を強制するが、アメリカの政治指導者はこの機に乗じて占領
軍の撤退、独立という取引に熱中し、フランスはアメリカの脅威
を叫んで話に乗って来ない。
やがて朝鮮半島における日独両陣営の対立となり、さらにベル
リンと東京の原爆相互攻撃という第三次大戦の悲劇的開幕に至る
まで、国際政治の虚々実々の展開を描いていく。
確かにナチスドイツが原爆をアメリカに先んじて開発、実用化
したら、逆様の世界はアあり得たのである。だが、では原爆も持
たない日本の立場である。もうドイツにものが言える道理はない。
必ず独日の戦争になる可能性が高いだろう、・・・・・単に荒唐
無稽といえばそれまででも、中国の状況はどうなるのか、日本の
アジア支配はどうなるのか、「さかさま」で単純化することなど
不可能というものだ。逆の「もしも英米が勝っていたら」という
章もある。著者の真意が読み取れそうだ。
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