海音寺潮五郎『日本歴史を散歩する』Kindle Unlimited、全23篇、雑多な内容だが実にコクがあって面白くためにもなる。
現在はKindle Unlimitedで簡単に読める。最初の刊行は1956年、
昭和31年と古いといえば古いが、内容を論じるにおいては別に
どうという話ではない。海音寺潮五郎は国学院大卒で基本、ま
ああ保守的、伝統主義的な考えの人物とはすぐ想像する。作品を
読んでも、である。
この本には全23篇の歴史エッセイが収められている。
「秘剣示現流」、「倭寇物語」、「虎の肉」、「チェスト関ヶ原」、
「南洲随筆」、「ボッケンモン人国」、「久坂玄瑞の恋文」、
・・・・・・・などといたって脈絡もない随筆が続くのだ。
例えば「虎の肉」は晩年、異様に若い女を愛した!秀吉が、そ
の強精のためにと朝鮮から虎の肉を取り寄せた話とか、「久坂玄
瑞の恋文」は、幕末の志士、久坂玄瑞が島原の愛妓に与えたとい
う今様混じりの綿々切々たる恋文の紹介、なのである。
「日本シンデレラ」という思わぶりなタイトルの随筆は、泥棒
皇族の話があるかと思えば、八百屋の娘から従一位まで成り上が
った、という恐るべき女、徳川綱吉の母親の話である。
「倭寇物語」は国学院出もあるが、学者のしかめっ面で仰々し
く書いており、けっこう相当な学術論文にもなり得るような歴史
的考察の文章だ。「町人の話」は町人が四民で最低なランクにお
かれ、蔑視されるようになったのは、三代将軍家光の頃からであ
り、それまでは寧ろ、優に大名とも対等なつき合いがあったとい
う。それを具体的な資料で論証というか立証していて、単に思い
つきで書いたようなものではない。
また海音寺潮五郎は鹿児島県、薩摩の出身、それに関連の「秘
剣示現流」、「チェスト関ケ原」、「南洲随筆」、「ボッケモン
人国」などは、まずあまり知られていないような事実を知ること
ができるし、さらに海音寺の熱血的なものを感じて、味わい深い。
「秘剣示現流」は別に剣豪ブームに関連はさほどないが通じるも
のは、やはりある。残りの三篇は歴史的評価、批判はさておいて
も薩摩人気質を知ることができるだろう。
まあ、いたって砕けた気持ちで読めば良さそうな随筆集だが、
そこはやはり海音寺で十分、ためにもあるし、コクのある内容だ。
だいたい海音寺は元来は大衆文学以前は、国学院で正式に史学の
勉学研究を行い、史書の読み方、評価法は心得ているのだから。
まあ安心して読めるだろう。さぞや保守的、皇国史観にかがんじ
がらめという先入観!は妥当しない。イデオロギッシュではない。
そこまでも歴史の流れであろう。
「頼山陽の母」「長久保なほ」はまた別の意味で面白く読める。
頼山陽が三十歳過ぎまで放蕩の限り、それで菅茶山に引き取られ
、人が変わったように、は別に知られていることだが、母の側から、
その日記の引用で述べているのはその人柄、母親の人柄を感じさせ
る。
最後は「日本人の理想像」なんだか、いかめしいタイトルだが、
内容は、「南総里見八犬伝」から現代の小説まで根底で型にはまっ
た、主人公はある型にはまっているという。全て多感、純情でも女
には不感症、いたるところで女性に求愛されながら受け入れない、
というがどうかなと感じる。
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