仁木悦子『林の中の家』1959,あまりに凝りすぎで複雑過ぎる人間関係、設定。


 1959年に発表された仁木悦子(1928~1986)の作品、童話出身
の作者だけに筆致が明るいというのは特色でもある。この年の
2年前の1957年、『猫は知っていた』で第一回、江戸川乱歩賞
を受賞している。

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 『林の中の家』、家とはラジオ作家の家である。10月のある
夜のこと、林の中の壮大な邸宅に留守番として住み込んでいる
仁木勇太郎と妹の悦子が談笑しているところに不意に電話がか
かってきた。それは女のきれいな声で、同一の区内にあるラジ
オ・ドラマ作家の、近越常夫の家からの電話であった。だが、
その電話が突如、彼女の悲鳴とともに切られてしまった。不安
になった仁木兄妹は、行ったこともない近越の家に駆けつける
と、書斎の中に、恵まれた体格の女が一人、頭を血まみれにし
て床の上に倒れていた。その近くに転がっていた、かなり大き
ばブロンズの文鎮に殴られたものらしかった。

 ・・・・・・・こういう出だしのこの小説は仁木兄妹が、警
察に協力して真犯人を探し出すという話なのだ、被害者は内海
義彦の妻で芸名を達岡房子というタンゴ歌手であった。内海義
彦は岳父の達岡康樹の経営す達岡商事の責任者だが、夫婦仲は
冷え切っていた。房子は近越常夫のいえにしばしば出入りし、
また近越も妻の音子と別居し、音子はルナ洋裁店を開いていた。

 だが、この作品だが人間関係が異常なまでに複雑なのだ。こ
れは読むとちょっと参りそうだ。

 被害者の房子の実家、達岡家について言えば、房子は康樹の
先妻の子で、現夫人の八重子の生んだ弟の敏樹とは腹違いのきょ
うだいであった。したがって房子が死ねば、敏樹ひとりが父親の
財産を相続できる。達岡家には敏樹の友人の津本広行という青年
が下宿し、また主人の姉の子で、両親が死んだために主人、つま
り叔父の康樹に引き取られて女子大に通っている原照美というお
転婆娘がいた。津本と彼女は恋愛関係にあった。彼女は来月二十
歳の誕生日を迎えるので、その機会に叔父から、いくらかまとま
った金を与えられるという希望がある。

 その他に、内海夫婦には自分の子、次郎を貰われている速見文
江という女性がいて、彼女は次郎が内海房子に愛されていないこ
とを知っている。何とかして次郎を取り戻そう云う気持ちがある。
彼女は房子を憎んでいる。文江には晴江という妹がいて、晴江は近
越音子の洋裁店に勤めている。達岡敏樹は晴江と恋愛しているが、
父の康樹はその結婚に反対している。

 この複雑な人間関係を提示されると、もうどうにでもしてくれ、
と読者は思ってしまうかも知れない。だが、この凝り性の構成は
この作者の特徴である。作者と同じ名前の仁木兄妹が解決に活躍
する。

 いずれの登場人物も多少なりとも殺人の動機を持っている。すべ
ての人物もアリバイはなんとかある。だが物語は進展し、心臓病で
今度の殺人事件の与えるショクをおそれ、絶対に知らされないよう
にしている康樹が、彼の手もとに送られた手紙に作為的に混入され
た房子の死をいたむ手紙を読んで、卒倒し、急死してしまう。また
続いて近越が「彼女を殺したのは私です」という遺書を残してガス
自殺を図り、未遂に終わる。

 仁木兄妹は、これらの事件とそれにからまる小事件を綿密に調査
し、慎重に推理し、結局、犯人は津本青年であり、彼は自分の作品
を無断改作した近越常夫を恨み、それを詰問にため近越家に訪ねた
ら、亭主が不在でそこに偶然いた内海房子と口論になり、激情にか
られて彼女を殺害した、・・・・・・ことを立証した。

 というのだが、あまりにも何かと複雑すぎて小道具も使いすぎて
いる。その推理はたしかによく考えられている。凝りすぎていて、
分かりにくい。読後、かなり経って理解できそうな作品だ。
















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