西独映画『橋』Die Brücke ナチスドイツ敗戦寸前、少年兵の悲劇、ド肝を抜かれるリアリズム

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 この映画を初めて見たのはもう十数年以上前か、NHKの教育
、世界名画劇場、だったか、そのあまりに強烈なラストシーン
には心底、度肝を抜かれた。戦争映画である。愛国心高揚映画
ではない。戦争の生み出すありとあらゆる悲劇の一つの断面、
この表現はまさしく戦争の表現である。最後に表示されるテロ
ップ、「これは1945年4月27日に実際に起きたことだが、些細な
出来事と見なされて軍の記録に残っていない」腹にこたえるラ
ストである。ちなみにドイツ無条件降伏はその10日後、5月7日
である。

 むろん、著名な映画で何処かで解説も多い。現在の日本の風潮
では歓迎されにくい映画だろうか。だが、これ以外、何処に真実
があるのか、と言いたくなる映画だ。

 オーストリア出身のドイツの男性俳優、ベルンハルト・ヴィッ
キが長編映画演出の第一作として作り上げた、まさに悲痛なる
戦争映画だ。散々なナチス少年兵の末路である。ドイツは絶対に
正しい、その叩き込まれた教条を信じて米軍戦車に体当り攻撃し
た少年兵たち、その哀れさ、悲惨さは映画を見終えても生涯、心
に残るものだ。

 原作があるという。アンフレット・グレゴールの小説だが、実
話に基づくものだという。

 1945年4月、あと半月もすればナチスドイツは無条件降伏という
敗色濃いドイツ中部の小さな町での出来事だ。米軍迫るに浮足立つ
市民たち、その中で、いまは高校最上級生として残されていた7人の
16歳少年たちは、勝利は我々に、となお意気軒昂だった。出演の少
年兵役は無名の素人少年から選ばれたというが、それがケレン味な
い熱演である。

 物静かな教師、ヴォルフガング・シュトゥンプが英語の勉強も続
けておけ、と諭したところで戦場の勝利にのぼせている少年の耳に
は入らない。映画は静かな前半が不相応に長ったらしく、そんな7
人の無邪気な危なかしさを表現する。教室の情景描写が実に生き生
きしている。息子たちを手放したがらない親たちの描写は、なんだ
かぎこちないように見受けられる。だが狼狽する母親などは、わり
と痛烈な皮肉を帯びる。

 それは、あの親たちはたしかに子どもたちを思って入るが、そん
な消極的な愛情ではあの狂気のナチズムから子どもたちを守るなど
、出来る道理もないと。

 ついに7人に招集の通知が舞い込んだ。新兵少年兵たちは、ダブダ
ブの軍服で営庭を右往左往する。予想外にきつい訓練に仰天しながら、
早くもその夜、非常出陣で叩き起こされる。彼らが配置されたのは、
前線などでなく、毎日遊んでいた町外れの橋の守備だ。要するに、そ
の後、味方が爆破予定の橋に、ていよく放り込まれたにすぎないとも
云えよう。ただ少年兵たちは無邪気ながら真剣だった。憧れの兵器を
手にしてのぞむ緊張感、と実は歓喜、こわばった表情で暗闇に立ち続
kぇる。その子供っぽいいじらしさが実によく出ている。

 そして夜明け、映画は長々とした静かなシーンから一転して地獄と
もいうべき修羅場に、正面から進撃する米戦車、少年兵たちは狂った
ように撃ちまくる、あまりに恐怖で発狂する少年兵もいる。少年兵に
撃たれて血の中に悶絶するアメリカ兵、この戦闘描写はすさまじい、
冷酷で戦慄だ。少年兵たちの捨て身の攻撃に仰天した米戦車は退却す
る、ここで味方が「なんてバカな子供だ」と橋を爆破に来る。その時
までに生き残っていた少年兵アルバートはその年配兵を背後から狙撃、
射殺した。死んだ同級生の遺体を引きずって家路につく、その絶望的
な静寂、反戦が忌み嫌われる現在の日本だが、政治家も国民も戦争を
実際には知らない世代、者ばかりである。戦争映画はスタンスはさま
ざまでも、これほどの感動作はちょっとない、というのが感想である。

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