石川達三『最後の共和国』、未来小説だが、2026年から2027年を想定、ロボット内臓の「道徳装置」の奇々怪々
1953年、昭和28年に発表された石川達三の未来小説である。
そのまた設定の年代が2026年から2027年にかけて、一年間で
ある。その予測、予想は的中したのか、である。そう思って
今読むと興味が湧くというものだ。
ストーリーは人間が作ったロボットが、逆に人間を支配する
に至るというものだ。未来小説としては古来、使い古しのよう
だが、これをAI,人工知能とすると、新たに考えさせられる。凡
俗な発想だが。だはこの小説はやはり古めかしい。
作者が考えていたロボットとは、アルマイトと鉄で出来てい
て、外見は「見た眼には人間と少しも変わらず、皮膚は男性ビ
ニロン、髪はナイロン製」と、懐かしい倉敷レーヨン、クラレ
の「ビニロン」が出てくる。内部は真空管やコンデンサー、ゼ
ンマ、電池など。電気回路とシンプルな機械メカということだ。
当時としても、これを読めばオモチャレベルトだったはず。そ
のアルマイトやビニロン、真空管、ゼンマイが21世紀でも、今
の2026年でも支配的とは思えない。当時でも貧乏くさいとされ
たようだ。
だが、この小説では、こんな安っぽいロボットが、人間と激
しい恋愛をして労組まで結成し、人間を征服することになって
いる。想定の2026年から2027年、そうなっているだろうか?
それというのもロボットに「道徳構造」と称する妙な機械装置
がセットされているためだという。ならば、この小説でいちばん
重要なポイントは、この「道徳装置」ということになる。
石川達三は「道徳はおそるべきものであって、あらゆる幸福
のもととなるが、あらゆる不幸の原因ともなる。道徳構造の性
質は、思想ともなり、人格ともなり、愛情の基礎となる。しか
るに愛情というものは、教養が伴わなければ、暴力を誘発し、
犯罪行為を誘発する」というのである。
「道徳装置」をセットされたロボットは、思想を持ち、人格
を形成し、愛情を抱くが、「機械には教養がない」ために暴力
を行い、罪を犯すとなる。
というのだが、未来小説としてはなにか魅力もない、冴えな
いもので道徳で現状を皮肉りたい?という本音が透けて見える。
ともかくこの小説の基盤にある歴史観が、20世紀は自由主義と
共産主義の争いの時代であったが21世紀は人間と機械の争いの
時代だという。単純過ぎるコンセプトなのだ。かくして人間が
機会に征服される、がこの小説の結論である。
ロボットの兵士で構成の世界保安隊が出来て、それを指揮す
る人間の将軍が世界政府のクーデターを行い、それで人間が滅
亡というのだが、この将軍がロボット隊の先頭に立って「肥馬」
にまたがっている、という。・・・・・ちょっとあきれるが、
これじゃアルマイトのロボットん征服されても仕方ないだろう。
石川は第三次、第四次の世界大戦を経て世界政府が出来たと
して書いているが、現実は甘くないと21世紀になっても思い知
るわえである。世界政府についてどんな組織なのおやら、その
説明はほぼない。概して人間、事件が不明瞭だ。経済は貨幣が
全廃、確かに21世紀、カード決済でのキャッシュレスは盛んで
、その点で予測は半分は当たった?かもしれないが。作品中で
はどうにも記述があいまい過ぎる。ロボットは何語を話す?
世界連邦政府はRUと云う略字、リパブリック・ユニオンだそう
だ。でもUnion of the republicとなるはずだろう。
ちょっと未来小説の素養も欠乏だし、基本的に知識がおかし
い。現状の風刺としても甘すぎる。
後記で「政治・経済科学文化等のあらゆる部門の知識を必要
とするが、到底、私の浅学をもっては書き遂げることが出来な
かった」とある。よくお分かりである。
最後に「職業作家は今世紀だけで終わりになりそうな気がす
る」・・・・・2026年なら生成AIで、・・・・と考えたら的外
れでもない?でもやはり無理だ。人間は人間であろう。
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