宮沢義俊『憲法Ⅱ』(人権)有斐閣法律学全集、改憲論議の前にまずこの本を読むべき、人権についての教養書として読める


 最初、出版年度は昭和34年、1959年だ。あの栄えある、有斐
閣法律学全集の中の一冊、『憲法Ⅱ』で人権規定の領域について
述べている。司法試験の受験基本書、として最近は選ばれている
のかどうか、まあ、そんな試験対策どうこうではなく、記述は
一般国民でも基本的に難なく読めそうな分かりやすい記述である。
あまり屁理屈をこねくりまわざす、この一冊で現行憲法の人権に
ついての規定をまずは考えるのはリーズナブルだ。現在は新版で
ペーパーバックで出ている。なお「憲法Ⅰ」は統治機構部分であ
る。

  人権思想の歴史:近代憲法において、人権、基本的人権に関す
る規定がこの書の本質的な中心部分だ。大きく二部に分かれてて、
一部は「人権総説」とあるように、人権思想の歴史とその発展で
ある。まずは13世紀、イギリスのマグナ・カルタに始まる前史か
ら18世紀末、アメリカの諸州憲法に見られる人権宣言、次はフラ
ンス革命の人権宣言について述べ、あとはそれがヨーロッパ各国
に広まり、当然、憲法の中に取り入れられるようになった過程に
ついて述べている。

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 次は、同じ人権宣言とみられるものでも、本来的な人権宣言と
、むしろ逆に欺瞞的人権宣言と称すべき、プロイセン憲法、大日
本帝国憲法(明治憲法)、ドゴール憲法などがあることを具体的
に述べている。次いで人権思想の内容が、初期の自由権、参政権
というような個人的なものから、20世紀になると社会権というも
のにまで発展した。第二次大戦後の国連憲章、世界人権宣言とい
う人権の国際化にふれている。ここまでが第一章「人権宣言の歩
み」である。

 そこで第二部「日本国憲法」にはいっていく。

 もっぱら日本における人権思想について述べられる。明治初期
の人権思想の芽生えに始まり、現行の日本国憲法の成立、その内
容、人権思想に及んでいる。主な項目は「人権宣言の通則」、「
法の下の平等」、「義務」、「自由権」、「家庭生活における個
人の尊厳」、「両性の平等」、「社会権」などなど日本国憲法の
第三章に規定される基本的諸人権の解釈と批判である。

 もうすまでもなく、いやしくも「法律学全集」の中の一冊だか
ら単に啓蒙書ではないが、実は啓蒙書、教養書としても読める、
というのも魅力だろう。

 そうはいっても法律書だから、新書版の啓蒙書を読むようなわ
けにはいかないが、それでも読みにくければ、まずは読みたい部
分の拾い読みでいいのではないか。特に第一部「人権宣言の歩み」
を読めば、人権は決してかりそめのものではなく、長い人類の闘
争の歴史の結果勝ちとられたものであり、発展されられてきた貴
重な権利ということを身をもって味わうべき。だから「抵抗権」
という一節を読めば、国家ないし、君主に対する基本的人権とい
う微妙な問題をめぐって、人権こそが国家より先に立つ天賦自然
の権利と納得できるものである。とはいえ、現実は簡単ではない
し、なんでも簡単に割りきれるものではない。「明治憲法との違
い」も読ませる。なお明治憲法への「郷愁」という勢力もある日
本だし、ヒトラーにも共鳴という勢力が与党にいることを思えば、
ここは必読の内容だ。

 この書の特徴、法律書、しかも法律学全集の一冊という埒を超
えてというべきか、非常にくだけた文章である。また押しつけが
ましさがない。抵抗権に

 「私が初めて憲法の研究に手をつけて以来、30年以上にわたっ
て、私の頭にこびりついて離れない問題、しかも考えれば考える
ほど、分からなくなる問題、いったん自分なりに解決できたと思
っても、もう一度考え直すと、その解決が少しも解決になってい
ないと分かってがっかりする」こりゃ、法律ドグマティックな文
じゃない。人権、いかにあるべき、読者にゆだねられる部分が多
いのだ。新版、ペーパーバックは読んでないので、何か誰かが付
加しているのかどうか、LBGTQの問題などこの書では想像もでき
ないだろう。まず考える基本として読むべき本だ。試験向きでは
ない。





 

 

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