漱石のロンドン留学時代の買春について、漱石日記に綴られた男の本音、

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 漱石のイギリスへの官費留学は非常に暗いものであった、
とは誰でも知る有名な話である。でロンドンは娼婦、街に
佇む娼婦の多い町でここを訪れた日本人男性はまず間違いな
く、これに関わっている。漱石日記によると、現地に駐在の
外交官とか商社社員の金遣いの荒さは官費留学生の貧乏暮ら
しとは異次元であったようで、漱石日記にも愚痴めいた本音
が綴られている。

 明治33年、1900年12月26日付・夏目鏡子宛て

 「逗留のものは、官吏商人にて皆小生などより金廻りのよき
連中のみ羨ましき事はなけれど、入らぬ地獄などに金を使い、
或いは無益の遊興贅沢品に浮身をやつし居候事惜しき心地致候」

 ここで出てくる「地獄」とは、江戸の俗語で最下層の売春婦を
意味するのだそうだ。「地獄」を買う金があれば本が買える、と
の付記しているところは、なかなか泣かせると思うが、夫人宛て
だから、せいぜい優等生ぶっているわけであろう。だが、「地獄
」の存在は本音の部分で非常に男として気になる存在であったよ
うだ。漱石もしょせんは男なのであった。

 明治34年、1901年2月5日付、某友人あての手紙

 「僕はまだ一回も地獄などは買わない。考えると勿体なくて買
えた義理ではない」

 「まだ一回も」は「いずれ買う」という当然というようなニュ
アンスがあるのは否めない。

 「勿体なくて」という表現は、言い換えれば「勿体なくなれば」
とっくの昔に買いにっているという本音の裏返しの表現にしか見
えない。

 語るに落ちる、とはこのことだろう。

 で漱石は二年間のロンドン留学中、では漱石は地獄を買ったの
かどうか、だがまず間違いないだろう。買わなかったから真面目
だった、とも言い難い。

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