大泉黒石『預言』、透徹した文章、寸鉄人を刺す内容。日本文学での類まれな世界的作家


 日本の文学者、作家は実際、正直、とるに足らぬ作家が多い。
およそ世界で小説では通用しないような身辺雑記が名作とおだ
てられる。おおむね退屈である。だが大泉黒石だけは別格だ、
自伝的なものからロシア文学、怪奇小説、『老子』など、退屈
なものは一作もない。その長編、『預言』の中の文章、だが、
白人の血が入っていて黒石はミスったペンネームではある。い
うまでもなく、俳優の大泉滉の実父である。

 『預言』当時の大泉黒石

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 私は言った。「小説家なんてものは実際、妙なところに目を
つけて、人生の横丁から路地の中を覗いて歩く一種の空き巣狙い
みたいなものです。わけもわからぬ塵箱から、ぼろぼろの靴を盗
み出してそれを修繕する。そしてこれは全く素晴らしいものだ、
どなた様か一度お履きになったものだと嘘をついて売るのです。
そのどなた様は、一向にそんなものをお払い下げになった覚えが
ないんだから、人を食ったものでさ。で、そんなことはどうでも
いいのでうすが、・・・・・・」

 とちょっとした一節というか部分だけで、そんじょそこらの
退屈な日本人作家とは異次元と思い知らされる。まあ、一種の天
才だと思うが、やはり日本の文壇では異端を通り越して不遇だっ
た。『わが故郷は世界文学』という著書のとおり、スケールが真
に世界的作家といえる。だが外国人にも評価されてもいないし、
知られてもいないようだ。やはり、例の腐敗臭でも日本古来の味
わいの文学が外国人に受けるのだろうか。

 『預言』は大泉が真に挑んだ小説というか、本気の小説だ。
最初、大正13年、1924年に『大宇宙の黙示』というタイトルで
刊行された。でも売れなかったようだ、内容はさておき。

 あらすじは天文学に熱中の学者の父、主人公は孤児で若い音楽
家、美貌の恋人は被差別部落出身、さらに、ならず者の小説家の
伯父をからませる。学説が否定されて発狂する父親で主人公は殺
人の罪を着て死刑寸前に、文章、記述は透徹しており、まったく
退屈させない。息をもつかせぬ小説とはこのことだろう。実際に
居住のエリアを舞台としているので(知っている人なら)現実感、
実在感があるだろうが、田舎者には縁はないが。地震で主人公は
脱獄、また有島武郎の心中についてもそれとなく言及している。

 最後の文章がこれだ

 「雲だ、雲だ。一切合財、みなあの白い浮雲だ。あっはっはっ
は・・・・・」

 人生とは、となってすべては幻想だ、というべきか。主人公の
恋人が被差別部落出身というのも、ハーフゆえの差別を受け続けた
大泉黒石の心情を物語るものだ。文壇でも差別を受け続けたのだか
ら。そんな日本の文学者に世界文学など理解できる道理はない、と
も喝破しているようだ。「宇宙的預言」の書の評価もある。

 被差別部落出身の恋人、千代子、大泉は三高在籍、中退で京都に
も通じてい入るが、千代子の出生地が京都の田中部落だ。田中部落
は朝田善之助などのルーツでもある。三高とまた田中部落は近接し
ていた。別に「田中部落」という名称が作品に出るわけでもないが、
宇宙的預言と同時に強烈な反差別の感情が作品を貫いているのは疑
いない。

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