中村真一郎『回転木馬』1957,(当時の)現代人のなんとも苦々しい喜劇

ダウンロード - 2026-08-13T211223.078.jpg
 タイトルの「回転木馬」は、目まぐるしく7人の男たちの姿
が現れては消えてゆく、そのさまを表している。

 〈七人の旧制高校の同級生〉大学助教授の阿蘇は自分より年
少の男が一足先に教授に昇進する、という噂を聞いて落ち込ん
でしまう。いわゆる秀才タイプ至ってソツはないが、妻はノイ
ローゼ気味で夫婦仲は気まずい。

 売れっ子の作家の吉見はラジオの連続放送劇のスクリプト執
筆に追いまくられ、全く寸暇もない。頭も朦朧として久々に訪
れてきた初恋の女性にまで、ついついメロドラマの主人公のよ
うなセリフを話してしまう。

 胡散臭い業界紙の記者の荒巻は、何とか月給を前借し、酒を
あおるしか楽しみがない男であり、芸術写真家の木曽谷は奇妙
な漁色家でモデルに次々と手を出すということで、結果、やり 
きれない自己嫌悪に陥る、その他に凡庸なサラリーマンの磯村、
出張で浮気をしてばれて妻にとっちめられる磯村、鈴木は地方
の行政の社会教育課に勤務、文学的情熱を燃やしていて密かに
作家になる夢を抱いている。

 この七人は旧制高校の同窓、同期生である。卒業後、数年、
旧制高校で仲間だったが「人類未来の会」というサークルを作っ
ていた。時代状況は右翼がはびこり、戦争の再来が危惧されてい
た中で「美とヒューマニズム」を討論し、おおいに若い夢と理想
を燃やし続けた。

 とまあ、こうなると、この小説は若き日の青年たちの情熱の後
日談あるいは、一種の幻滅物語かと思ってしまうかもしれない。
実際、この七人は要は「成れの果て」という趣の滑稽な人物であ
り、過去と現在の対照の皮肉は明らかである。この七人が20年ぶ
りに集まてt会を開く。「会の前」、「会」、。「会の後」と作
品は展開していく。

 「会」は最初からちぐはぐで、純真な鈴木が助教授の阿蘇に地
方の文化講演会を頼んでにべもなく断られ、売れっ子作家の吉見
は鈴木のムキになって話す純粋文学論に気を悪くする。呑み助の
荒巻は泥酔し、手が付けられなくなり、幹事の磯村が潮時をみは
からっれ解散に持ち込み、いたって型通りの懇親会で終始した。

 散会後、木曽谷の案内で風俗のいかがわしい店に立ち寄る。

 一人で帰宅した阿蘇は訪ねてきたテレビタレントの女性の妹に
さんざん、とっちめられる。妻からは深夜に不意に離婚を申しだ
される。

 苦々しい喜劇で、本当に中村真一郎、こんな作品書いたの、と
云うのが正直な感想だ。

この記事へのコメント