フレデリック・ダール『甦える旋律』1980、文春文庫、純愛ロマンに軸足を置いたフランス推理小説大賞受賞作


 原作は仏蘭西のサスペンス小説界の巨人と云えるフレデリッ
ク・ダール、Frederic Dardが1956年に発表した作品で翻訳は
1980年に文春文庫から長島良三の訳出で刊行された。原題は
Le bourreau pleure 死刑執行人は泣く、で邦題がなぜか「甦る
旋律」である。よみがえる、が蘇るではなく「甦る」である。
ただフランスのサスペンス小説なので日本では知名度は低い、
ただ日本で、というだけでらう、当時、フランス推理小説大賞
を受賞した。米英の推理小説がサスペンスに富んだものという
か、ちょっとギスギスしているがフランスの推理小説はやはり
文学的、ロマンの味わいがある、というべきか。

 したがって、というのか、この作品も文学的味わい、しみじ
みとした文学的情趣がある。

 ストーリーはバルセロナに近い、海辺に来ていた新進画家の
ダニエル・メルメはある夜、車をドライブ中にヴァイオリンを
抱えて歩いていた若い女性をひいてしまう。幸いなことに、生
命に別条はなかったのだが、車に激突されたショックで記憶を
ほぼ失ってしまった。だが、このような状況に若い女性を陥れ
たくせにメルメは若く何とも魅力的な女性にかなりメロメロに
なってしまう。結果的に相思相愛、熱烈な恋愛となった、・・
・・・このあたりがフランスの小説らしい。

 そのあげくに二人はいい関係になるが、そのときメルメは
彼女に体に子供産んだ時の傷跡を見つけた。手術出産の傷跡
を見つけ、愕然とする。そこで記憶喪失の彼女から語られな
いその過去を追跡しようと、メルメはパリに赴く。そこで彼
が見出した地獄のような修羅場、である。驚くほどの女の忌
わしい過去である。・・・・・それがどうした?どこまでも
ロマンチックな純愛小説で、結末に女のとんでもない過去と
いうひねりが効いている、・・・だが日本の推理小説、古風
な言い方では探偵小説を数多く読んだ人から見れば、さした
るものでもない、のではないだろうか。どこまでも色物すき
なフランス人好みの作品、端的に言えば女性向け作品という
べきだろうか。ダールの作品があまり邦訳されないのも、確
かに理由があると思える。


images (62).jpg







この記事へのコメント