吉行淳之介『闇の中の祝祭』1962,作者の不倫の実体験を描く暗澹たる作品

 この「闇の中の祝祭」は作者、吉行淳之介の神経がピリピリ 震動するような、なんとも胸苦しくなるような作品である。ど きりとさせられる、鋭利な表現にたびたび遭遇する。全体的に 非常に暗いといえる。それというのも進行中の不倫を描いたよ うなものだから、  「恋愛に対してシニックな姿勢を取り続けてきた男」と自ら 云う作…
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「人間とは70歳から100歳までの間に必ず死ぬ生き物である」70歳からの再生

    人間が直視できないもの、「太陽と死」とは云うが、ここ まで超高齢化社会となってくると、「死」を直視しないなど、 それこそ滑稽な話である。実際、「終活」なんて言葉はごく ごく、普通に使われている、以上に重要なテーマとなってい る。最近、頭によく浮かぶ言葉は    人間とは70歳から100歳までの間に必ず死ぬ生き物であ…
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ジェームス・ヒルトン『学校殺人事件』1931,非常に文学的な探偵小説

James HIltお  ジェームス・ヒルトンといえば『失われた地平線』、『 チップス先生、さようなら』で日本人にも非常によく知られ た作家である。『失われた地平線』は1933,『チップス先生』 は1934,で1931年にグレン・トレバー名義で発表されたのが 『学校殺人事件』Murder at Schoolであっる。翻訳書もあ…
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野間宏『わが塔はそこに立つ』1962,魑魅魍魎の戦前の異様な青春物語,すさまじい土民的力感

 基本的に著者、野間宏の半自伝であろう。といって自伝と サされず小説化されている。生まれが神戸の長田の貧民窟に 近い場所に生まれ育った点を、大阪の貧民窟に変えている。 主人公の海塚草一は、大阪の貧民の町に説教場を持つ念仏宗 の僧の息子として生まれ、将来、宗門を発展さえるホープと して育てられる。だが徐々に、文学に心…
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宝塚、懐かしの写真館(282)『たからじぇんぬ』1937年、昭和12年11月、大劇場公演

 『たからじぇんぬ』白井鐡造作・振付、高木四郎・振付 須藤五郎・作曲(解説)単に宝塚のみならず、我が国のレ ヴュウ界の至宝、白井鐡造先生は再度の欧米留学を終えて さる9月めでたく帰朝、一年に渡る収穫を傾け堂々世に問う 第一回グランド・レヴュウ、その名も床しい「たからじぇ んぬ」さらに一段の練磨修練を経て、かっての傑作「花詩…
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